チョコレートコラム4・チョコレート会社の社長、そのもう一つの顔は?

19~20世紀は、労働者の社会運動が世界的な気運となった時代でもありました。貧困や格差、それに伴って生じる様々な現象が大きな社会問題となり、労働者が自らの権利を求めて、立ち上がっていった時代です。

イギリスでもそれは例外ではなく、労働者の待遇改善や貧困問題などに注目が集まっていました。こうした中で活躍したのがクエーカー教徒です。

Morphart Creation/Shutterstock.com

Quaker meeting/Morphart Creation/Shutterstock.com

クエーカーとは、キリスト教の一派ですが、イギリス国教会が信仰を支配するイギリスにおいては、長く迫害されていた宗派でもあったため、信者間の互助関係が確立され、自分たちの信仰のもとに、奴隷解放運動などさまざまな社会改良に積極的に関わっていた人達でもありました。

そんなクエーカー教徒の中に、イギリスのチョコレートメーカー「ロウントリー社」があります。今は、ネスレに合併されてしまったため現在では聞きなれない名前ですが、実はあの有名なウェハースをチョコレートで挟んだお菓子「キットカット」を生み出した会社です。

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ロウントリー社の働き

ロウントリー社は、社員への手厚い福利厚生を行ったことでも知られています。特に、ベンジャミン・シーボーム・ロウントリーは、経営の傍らで、イギリスの貧困問題に積極的に関わった人でした。

今日のような「生存権」がまだ認められていない時代、貧困は自己責任と考えるのが一般的で、労働者階級が集中する都市に特有の問題であると考えられていました。

そうした中でシーボームは、貧困は個人で解決できるような問題ではないこと、貧困がどのような問題を引き起こすのかということを、緻密な調査をもとに明らかにした研究報告書「貧困――都市生活の研究(1901)」を発表します。

特に、貧困を第一次貧困と第二次貧困とに分け、貧困はロンドンのような都市に特有の問題ではなく、イギリス全体に貧困が蔓延していることを明らかにし、その後のイギリスの社会福祉政策を推進させるきっかけとなりました。現在でも、社会学、社会福祉学などの分野で高く評価されており、社会福祉に携わる人は必ず学ぶ事項の一つとなっています。

世界的なヒット商品「キットカット」を生み出したロウントリー社のシーボームは、社会福祉の分野にも大きな影響を与えた人として歴史に名前を残しているのです。