カカオの3つの品種
Lesson5では、神々の飲み物として、また通貨としても利用された高貴なカカオについてより深い知識を学んでいきましょう。
カカオには、大きくわけて3つの品種があります。それぞれの特徴などを理解すると、チョコレート選びがより楽しくなります。
クリオロ種(CRIOLLO)
最も数が少ないため、貴重な品種といわれているのがクリオロ種です。
クリオロ種のカカオ豆は、色素が少ないため断面が真っ白なのが特徴です。「クリオロ」とはスペイン語で「土着の」という意味で、紀元前から中米で栽培されていたといわれる古い品種です。人類が初めて出会ったカカオというわけです。マヤやアステカの人々が飲んでいたのも、このクリオロ種であったのだろうといわれています。
クリオロ種の特徴
カカオポッドは先端が尖っており、表面に深い筋があります。
ポリフェノール含有量が最も少なく、カカオの魅力を最大限に引き出すことができるといわれる品種で、生の豆を食べてもおいしいとすら言われています。また、苦味が少なく独特な芳香を持つので、「フレーバービーンズ」として珍重されており、クリオロ種で作ったビター・チョコレートは抜群の味になります。
しかし、病害虫に弱く、栽培が極めて難しいため、プランテーションなどでは台風や病害虫のために全滅してしまうということもしばしば起こりました。
栽培が難しい希少種
クリオロ種の栽培は、ハイリスク・ハイリターンですので、今日でも、ベネズエラやメキシコなどで少量生産されているのみです。したがって、生産量は全体の1~5%と大変希少価値の高い品種となっています。
フォラステロ種(FORASTERO)
フォラステロ種は、ポリフェノールをたっぷりと含む品種です。「フォラステロ」とは「異国の」という意味で、原産地は南米のアマゾン川流域とされています。カカオポッドは、先端が丸く表面がなめらかで、浅い筋を持ちます。
フォラステロ種の特徴
芳香はやや弱いもののカカオ感が強いので、チョコレートを作る過程では「ベースビーンズ」として利用されます。病害虫にも強いうえに成長が早く収穫量が多いので、西アフリカや東南アジアなどで広く栽培され、世界のカカオ生産の85~90%を占めます。
苦味が強く、そのままではビター・チョコレートには不向きなのですが、ミルクと混ぜるとこの強い個性が調和して絶妙な味へと変化します。
トリニタリオ種(TRINITARIO)
18世紀に、カリブ海のトリニダード島で生まれたのがこの名前の由来とされます。17世紀後半に入ると、フランスの植民地政策の一環としてカリブ諸国ではカカオが生産されるようになっていました。しかし1727年、カリブ一帯のカカオがほぼ全滅するという事件が起こります。原因は、病害によるものという説と、ハリケーンによるものという説がありますが、詳しいことは現在でもよくわかっていません。
これにより、トリニダード島を除くカリブ海一帯の地域は、カカオ栽培から撤退してしまいます。トリニダード島にわずかに残ったクリオロ種のプランテーションに、新たに持ち込まれたのがフォラステロ種でした。ここで、クリオロ種とフォラステロ種の交配種(ハイブリッド種)が誕生します。これがトリニタリオ種です。
トリニタリオ種の特徴
クリオロ種の優れた香味と、フォラステロ種の病害虫等に強い性質を兼ね備えた期待の品種といわれます。交配の具合によって多様な特徴を持ち、栽培もしやすいため生産量は全体の10~15%程度を占め、本家トリニダードやベネズエラで生産されています。
■Lesson5-1 まとめ■
- カカオには代表的な3つの品種がある。クリオロ種(CRIOLLO)、 フォラステロ種(FORASTERO)、トリニタリオ種(TRINITARIO)は、それぞれに特徴がある。
- クリオロ種のカカオポッドは、先端が尖って表面には深い筋がある特徴的な形をしており、苦味が少なく独特な芳香を持つためフレーバービーンズとして珍重される。
- クリオロ種は、紀元前から中米で栽培されていたとされる古い品種で、人類が初めて出会ったカカオであり、マヤやアステカの人々が飲んでいたのもこの品種だといわれている。
- クリオロ種は病害虫に弱く、栽培が極めて難しいため、ベネズエラやメキシコなどで少量生産されているのみである。生産量は全体の1~5%と大変希少価値の高い品種である。
- フォラステロ種のカカオポッドは、先端が丸く表面がなめらかで、浅い筋を持つ。
- フォラステロ種は、芳香はやや弱いもののカカオ感が強いので、チョコレートを作る過程では、「ベースビーンズ」として利用される。
- フォラステロ種は病害虫にも強いうえに成長が早く、収穫量が多いため、西アフリカや東南アジアなどで広く栽培され世界のカカオ生産の85~90%を占める。
- トリニタリオ種はカリブ海のトリニダード島で生まれたのがこの名前の由来とされる。
- トリニタリオ種はクリオロ種とフォラステロ種の交配種で、クリオロ種の優れた香味と、フォラステロ種の病害虫等に強い性質を兼ね備えた期待の品種である。
- トリニタリオ種は交配の具合により、多様な特徴を持ち栽培もしやすいため、生産量は全体の10~15%程度を占め、トリニダードやベネズエラで生産されている。