Lesson2-4 世界のチョコレート規格

コーデックス規格とは

各国が貿易において食品の輸出入を行うためには、国際的な食品に関する規格が必要です。

これには「コーデックス規格」が用いられます。「食品規格」を意味するコーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)というラテン語から生まれた言葉で、現在世界的に通用する食品の規格はこのコーデックス規格のみです。

食品の規格を定めるだけではなく、摂取すると人体に害のある物質の量の限度や、衛生的な取り扱い方法などを定めることで、世界中の消費者の健康を保護し、食品貿易を促進することを目的としています。
国連の専門機関である国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が、1962年に合同で国際的な食品規格を設けることを決定したことにはじまり、現在に至ります。

 

 食品の世界貿易の基準となるコーデックス規格

世界では多くの商品で貿易が行われており、TPPやFTAなど各国の貿易に関する動きが活発になってきています。

ですが世界貿易は世界貿易機関(WTO)体制下にあり、日本はWTO協定に批准しています。貿易を行う上でトラブルが起こった場合にはその仲介や裁定に当たるのがWTOですが、その際に基準となるのは、食品の場合このコーデックス規格です。

規格そのものに法的な拘束力などはありませんが、科学的に証明されるなどの特別な理由がない限りこの規格を無視することはできず、そのために国内法規などにも大きな影響を与えるものとなっています。

ただし、各国のそれぞれの事情を加味した論議を行って決定される基準なので、必ずしも日本の現状と一致するとは限りません。とは言ったものの、コーデックス規格に合わせなければ国際競争力を失いかねない……、そんなジレンマに陥ったのがまさに「チョコレート」でした。

 

日本のチョコレートは「チョコレート」とは呼べない?

Lesson2-1〜2-3で日本のチョコレートの規格について述べた際、「必要により糖類・乳製品・他の食用油脂・香料等を加えたもの」という規定がありました。

日本をはじめとするアジア諸国で生産されるチョコレートには、カカオバターではない「他の食用油脂」が含まれている商品が多くあります。


日本では、年間を通して食べやすい堅さにチョコレートを保つために、「ハードバター」と呼ばれるヤシ油やコーン油を化学的に改質した成分が含まれているものが多くあります。
夏や冬など出荷時期に応じて添加油脂の量を調節し、堅さを調節するなどの企業努力の一方で、安価なチョコレートはこのハードバターによりトランス脂肪酸などを含んでいるものもあり、ニキビや健康トラブルの原因ともなります。

このようなチョコレートは、世界基準の規定からすると「カカオや乳脂肪とは関係のない、全く別の油脂によってできているチョコレートのようなものという言い方もできるかもしれません。
それに対して、伝統的なチョコレートを大切にするベルギーをはじめとしたヨーロッパ諸国で生産されるチョコレートの油脂分は、多くがカカオ由来の「カカオバター」なのです。

Antonio Gravante/Shutterstock.com

Antonio Gravante/Shutterstock.com

日本で多く生産される「その他の食用油脂」を添加したチョコレートは、チョコレートとは認められないというのがヨーロッパ諸国等の主張で、これが日本を中心とするアジア諸国との主張と対立しました。
最終的には、カカオバター以外の食用油脂が添加されていても国際規格としては「チョコレート」と表示して良いということで決着しましたが、国際的に見れば、「日本のチョコレートはチョコレートとは呼べない」という意見も根強く残っています。

 

■Lesson2-4 まとめ■

  • 世界的に通用する食品の規格として「コーデックス」規格がある。
  • コーデックス規格は食品の規格を定めるだけではなく、摂取すると人体に害のある物質の量の限度や、衛生的な取り扱い方法などを定めることで、世界中の消費者の健康を保護し、食品貿易を促進することを目的としている。
  • 安価なチョコレートには、ハードバターと言われる添加物を含んだ植物油脂が使用されているものもある。
  • コーデックス規格による世界規格のチョコレートは、使用する油脂の基準が日本のチョコレート規格とは異なるため、国際的には「日本のチョコレートはチョコレートとは呼べない」という意見も根強く残っている。