Lesson3-3 プロテスタント諸国での発展〜ヴァンホーテン〜

ヴァン・ホーテン

南ヨーロッパのカトリック諸国とは異なった歴史を歩んだのが、北西ヨーロッパのプロテスタント諸国でした。

中継貿易で栄えたオランダや、海運業で栄えたイギリスなどでは、18~19世紀に入るとカカオの輸入量が増大します。ココアを提供するコーヒーハウスやカフェも増え、南ヨーロッパの国々と同様に市民層にもココアが広まり、需要が増していきました。

そうした時代の流れのなかで、オランダのアムステルダムに、一つのココア販売業者が登場します。カスパルス・ヴァン・ホーテンは、運河沿いの小さな工場でココアの製造と販売を始めました。カカオ豆を焙焼・焙煎し、オランダ名物の風車の力を借りて石臼で挽き、固形に固めて売り出したのです。

しかし、当時のココアは基本的にはカカオマスをお湯に溶いたものであり、油脂分が多く、砂糖やバニラを混ぜても、まだまだ飲みにくいものでした。

ココアが広く普及し販売量も増加するにつれて、より飲みやすくするための工夫が必要となります。飲みやすくするためには、油脂分をコントロールすることが第一の課題でした。

この課題を見事に解決したのが、カスパルスの息子、コンラート・ヴァン・ホーテンでした。

おいしい「ココア」の誕生

現代でも有名なヴァンホーテンココア。このココアの発展に大きな功績を残した人物が、このコンラート・ヴァン・ホーテンです。

Coenraad Johannes van Houten

Coenraad Johannes van Houten

コンラートは、カカオマスを圧搾してそこからカカオバターを除き、油脂分を50%から25%程度へ軽減するという「脱脂」の方法を生み出しました。油脂分が少なくなったカカオマスは、固くしまった塊となり、これを粉砕するとこれまでよりもずっと細かい粒子のココアパウダーができるようになります。

薬学や化学の知識を持っていたコンラートは、次に味の改良に着手します。

酸味や渋味が強く残るカカオマスに、炭酸ナトリウムなどのアルカリ塩を加える「アルカリ処理」の方法を開発、この改良によって水とココアパウダーがよく混ざるようになりました。酸味も軽減され、口当たりのよいまろやかなココアが誕生し、ココアはそれまでよりもずっと飲みやすいものとなったのです。


■Lesson3-3 まとめ■

  •  18~19世紀には北西ヨーロッパのプロテスタント諸国でもココアが広まり、カカオ需要が高まっていった。
  • 当時のココアはまだ油脂分が多く、砂糖やバニラを混ぜても飲みにくいものだった。
  • おいしいココアの発展に大きな功績を残した人物が、オランダのコンラート・ヴァン・ホーテンである。
  • 彼はカカオマスを圧搾してそこからカカオバターを除き、油脂分を50%から25%程度へ軽減するという「脱脂」の方法を生み出した人物である。
  • さらに味の改良に成功、酸味や渋味が強く残るカカオマスに、炭酸ナトリウムなどのアルカリ塩を加える「アルカリ処理」の方法を開発。これにより水とココアパウダーがよく混ざるようになり、現代のココアに近いものが完成した。