チョコレート誕生と様々なココアパウダー
19世紀は、ココア・パウダーの改良が盛んに行われた時代でした。その中心的存在となったのが、フライ家、キャドバリー家、そしてロウントリー家です。
フライ家による固形チョコレートの発明
まず、フライ家について学んでいきましょう。
イギリスのブリストルは、大西洋をめぐる貿易で栄えた町です。固形の食べるチョコレートは、この町で生まれました。
それまでも「ココアをかじる」という習慣はありましたが、これは単に飲料のココアを作るような暇がないときに、「ココアの塊」をかじっていただけでした。
フライによるチョコレートの発明
19世紀の半ば、ブリストルの町で薬局を経営していたジョーゼフ・フライは、カカオマスにカカオバターを加えることによって、カカオマスの成分を変えることを考え出します。
それまでは、ヴァン・ホーテンのように「カカオマスからいかに油脂分を取り除くか」に関心がありましたが、フライは逆にカカオマスにカカオバターを加えることによって、より多くの砂糖を溶かし込むことに成功、苦味を軽減させる方法を生み出したのです。
しかもこうして作られたカカオマスは、さらによくかき混ぜて練り上げることによって滑らかな舌触りとなり、成形も容易になりました。
こうして、ココアは「飲料」から、いよいよ固形の「食べる」チョコレートへと大変貌をとげることになるのです。
キャドバリー家のミルク・ココア
ジョン・キャドバリーは、ココア・パウダーにミルクの粉末を入れてミルク・ココアを開発し、これを売り出したところ大変な人気を呼びました。
さらに息子のジョージは、上質なココア・パウダーを作るためにオランダで修行し、ヴァン・ホーテン社の機械と技術をもって帰郷、以後品質の高さで定評を得るようになります。
ロウントリー家の100%のピュアココア
そのキャドバリー家に並ぶ評価を得たのが、ロウントリー家です。ロウントリーの「エレクト ココア」は、100%のピュアココアとして高く評価されました。
「ココア」が市民の健全なカロリー源に
このように19世紀半ばにはココア・パウダーの改良がなされ、それと同時に砂糖の価格が下がり、労働者階級でもココアに砂糖を入れて飲むことができるようになりました。
それまで、手短にカロリーを摂取するために労働者たちが用いていたのはアルコール、つまりお酒でした。この事はたびたび社会問題となっていました。
この時代、安価でおいしいココアが誕生することにより、薬効もあり、なおかつおいしく手軽にカロリーが摂取できる飲み物を手にすることができるようになったのです。
■Lesson3-4 まとめ■
- 19世紀になるとココア・パウダーの改良が盛んに行われる。その中心的存在となったのがフライ家、キャドバリー家、ロウントリー家である。
- ジョーゼフ・フライはカカオマスにカカオバターを加えることで、より多くの砂糖を溶かし込むことに成功、苦味を軽減させる方法を生み出した。
- フライにより改良されたカカオマスは、滑らかな舌触りで成形も容易となり、ココアは「飲料」から固形の「食べる」チョコレートへと大変貌を遂げることとなる。
- ジョン・キャドバリーはココア・パウダーにミルクの粉末を入れてミルク・ココアを開発した。
- ロウントリー家の「エレクト ココア」は、100%のピュアココアとして高く評価され、キャドバリー家に並ぶ評価を得る。
- 19世紀半ばのココア・パウダーの改良と同時に砂糖の価格が下がり、労働者階級でもココアに砂糖を入れて飲むことができるようになった。安価でおいしいココアが誕生することにより、アルコールに代わって、薬効とおいしさを合わせたココアがカロリー源として普及した。