Lesson4-3 テオブロミン

テオブロミンとは

 右端がテオブロミンの化学式です/chromatos/Shutterstock.com

カフェイン・テオフィリン・テオブロミンの化学式比較/chromatos/Shutterstock.com

テオブロミンいう言葉を聞いたことはあるでしょうか。

テオブロミンとは、カカオに含まれるアルカロイドの一種で、チョコレートのほろ苦さの元となっている物質です。カフェイン、テオフィリンと似た化学構造を持っていますが、効力としてはテオブロミンが最も穏やかで、カフェインなどの15%程度の作用があります。

カカオには、カフェインが0.07~0.36%、テオブロミンは1~4%含まれています。カフェインの量を比較すると、表のようになります。カカオに含まれるテオブロミンの量はカフェインの数十倍〜数百倍で、カカオにはカフェインよりもテオブロミンが多く含まれます。また、チョコレートの他にもチューインガムにテオブロミンが含まれているものもあります。

chimique1

 

テオブロミンの働き

テオブロミンは、カフェイン同様に中枢神経に働きます。構造はカフェインに良く似ていますが、カフェインとは逆で精神を落ち着ける作用があり、脳に直接働きかけて穏やかに刺激することで精神状態が安定すると考えられます。

チョコレーを食べたり、ココアを飲んだりすると、気持ちが落ち着いてリラックスできると感じる人も多いでしょう。

テオブロミンには自律神経を整える効果があり、しかもその持続性は高くリラックス効果が長時間続くと言われています。リラックスすることで集中力を高めることもできるので、勉強に励む受験生や重要な仕事の場面、憩時間に活用する事も有効でしょう。

また血管を拡張させる働きがあります。血管が拡張すれば血液の循環が良くなるため、代謝もよくなり、利尿、疲労回復などにも効果があるといわれています。

 

様々な効能に対する考え方

カカオには、こうした機敏さや記憶力、学習、認知といった機能を副作用なく安全に高めることができるという効果や、疲労回復効果が期待される事も多い一方で、これらの効能については学者によって意見は随分と分かれる点も覚えておく必要があります。

健康分野に関する科学的見解はまだはっきりと証明されていないものが多く、一つの結論を明確に示す事が難しい分野です。そのため、なにか一つの意見に陶酔せず、「様々な見解がある中でこのような良い主張もある」、と中庸な視点を持ち、自分が信頼できるものを取り入れていくスタンスが大切です。

テオブロミンに関しても、単純な長時間の作業に対する改善効果があることについては確かであると発表されていますが、過信は禁物です。またテオブロミンは、テオフィリンやカフェインと比較して、中枢神経や末梢神経に働く作用が弱いとされていますが、過剰に摂取すればカフェイン同様「依存症」を引き起こす可能性もありますので、節度を持って取り入れるようにしましょう。

 kazmulka/Shutterstock.com

kazmulka/Shutterstock.com

 

■Lesson4-3 まとめ■

  • テオブロミンとは、カカオに含まれるアルカロイドの一種でチョコレートのほろ苦さの元となっている物質。カフェイン、テオフィリンと似た化学構造を持つ。
  • テオブロミンは中枢神経に働き、カフェインとは逆で精神を落ち着ける作用を持つ。
  • テオブロミンには自律神経を整える効果があり、その持続性は高くリラックス効果が長時間続く。
  • テオブロミンには血管を拡張させる働きがあり、血液の循環が良くなるため代謝もよくなり、利尿、疲労回復効果も注目されいてる。
  • 様々な食品の健康効果に関してまだ研究途中のものが多く様々な説がある。その中で一つの意見に陶酔することなく、自分が信頼できるものを選び出し中庸なスタンスで取り入れることが、様々な情報に踊らされないための大切なポイントである。

 

※チョコレートへの依存に関して

チョコレート依存症という言葉があります。若い女性に多く見られるもので、チョコレートがやめられない状態を指す言葉ですが、この原因はいったいなんでしょうか。

上でテオブロミンの依存性について少し触れましたが、現代の日本で手に入るチョコレートではテオブロミンによるチョコレート依存を心配する必要はほとんどありません。それは、日本の安価なチョコレートはカカオ濃度が高くないからです。

現代のチョコレート依存症の原因として最も関係が深いのは「白砂糖」への依存です。白砂糖により血糖値の急上昇と急降下が起こり、いくら食べても満足しない状態が続き依存症のようになる場合があります。精製された砂糖を使用している安価なチョコレートを避け、カカオ濃度が高く本物のカカオバターを使用した、上質なチョコレートを選び少量を味わって食べれば、このような依存症になる心配はありません。

せっかく食べるなら、質を重視してみましょう。

※チョコレート中毒

犬にチョコレートを与えるのは厳禁!と聞いた事があるでしょうか。これは犬はテオブロミンにより中毒症状を引き起こす可能性が高いためです。

中毒を起こすのは、テオブロミンの量が体重1kg当たり200mg以上と言われていますが、その半量にも満たない量で死に至る症例もあります。これはテオブロミンを含んでいる、ココアパウダーでも同じことが言えます。

即効性のある治療薬などもなく、中毒を起こした場合は治療に時間がかかるため、大切なわんちゃんにはチョコレートをあげないよう注意しましょう。