Lesson4-4で学んだカカオバターが主成分となっているチョコレートは、大変デリケートです。せっかくのチョコレートも保存方法を誤ると、そのおいしさを存分に堪能することはできません。
チョコレートの味が落ちるブルーム現象
夏場にうっかり放置してしまったチョコレートが溶けて、再び固まった時に表面が白っぽくなった経験はおありでしょうか。これをブルーム現象といいます。
ファットブルーム
この白っぽいまだら模様には、2つのタイプがあります。1つが「ファットブルーム」という、カカオバターの粗大な結晶です。
一度溶かしたカカオバターを再び固めるときには、「テンパリング」(詳しくはLesson4-6参照)という温度調節を行うことが必要です。しかし、自然に溶けてしまったチョコレートについては、それを行うことができません。
その結果、カカオバターの結晶が粗大なものとなってしまい、見た目も風味も悪い「ファットブルーム」が表面を覆うことになります。
シュガーブルーム
こうしたカカオバターの構造が原因で起きるファットブルームの他に、チョコレートの劣化には「シュガーブルーム」というものがあります。こちらもファットブルームと同様に、チョコレートの表面に白いまだら模様ができてしまいます。
冷蔵庫などで保存していたチョコレートを温かい場所に出して放置したり、湿度の高い場所などに放置したりしてチョコレートの表面に水滴が生じた場合、それをそのままにしておくと、チョコレートの中に含まれている砂糖がその水に溶けだし、再び結晶化します。これが「シュガーブルーム」です。
温度変化に弱いチョコレートは冷蔵庫で保存しないほうがよいというのは、このためです。
いずれにせよ、パッケージに「食べる上では問題ありませんが、味が落ちます」などと表記されている通り、一度溶けて再び自然に固まったチョコレートは、見た目も悪く実際に味も落ちます。せっかくのチョコレートも、このように保存方法によって変化してしまっては最高の味を楽しむことが難しくなってしまいます。
チョコレートをおいしく食するには、正しく保存する事も大切なのです。
チョコレートの保存
チョコレートはパッケージに書かれていることを守って保存するようにします。コンビニエンスストアやスーパーなどで売られている製品の多くには、「28℃以下の涼しい場所で」という記述がなされていますので、まずはこれを守ることが一番です。
また、チョコレート専門店などでボンボン・ショコラ等を購入する際には、持ち歩きの時間などをお店の人に相談するようにしましょう。保冷材や保冷バックなどの配慮をしてくれるお店も少なくありませんので、ぜひ利用してみましょう。
保存のポイント
すぐに食べきらない場合、下記の保存方法がおすすめです。
- 一回に食べる分ずつ、ビニール袋などに入れる
- サランラップなどで厳重に包む
- まとめてジップロックなどの保存袋に入れる
- 冷蔵庫の野菜室で保管する
チョコレートには、ブルームの発生による味の低下や、急激な温度変化に弱い、まわりの匂いを吸収しやすいなどといった特徴があります。
そのため、①何度も冷蔵庫から出し入れしないですむよう一度に食べる分ずつ小分けし、②急激な温度変化が起こらないようラップや緩衝剤などで厳重に包み、冷蔵庫の中でも比較的温度が高い野菜室に入れ、③冷蔵庫内の匂いが移らないようにジップロックなどの保存袋に入れるのがおすすめの方法です。
季節による保存のポイント
季節による保存法の違いもあります。
夏は常温では溶けてしまうため冷暗所か冷蔵庫で保管します。ただし、冷蔵庫から持ち出したチョコレートは急激な温度変化によりシュガーブルームや水滴が発生しやすくなるため、長時間の放置はご法度です。また出し入れを繰り返すことも良くないので、食べる分だけ取り出すようにします。
冬は、チョコレートの季節でもありますから、基本的には常温(室温)保存で十分です。一般的に15~22℃程度がチョコレートの保存温度とされているので、暖房器具の近くや直射日光のあたる場所などを避ければ、特に冷蔵庫に入れる必要はありません。
せっかくの特別なチョコレート、保存法にも気を配って、おいしくいただきましょう。
■Lesson4-5 まとめ■
- ファットブルーム・・・カカオバターの粗大な結晶。自然に溶けてテンパリングが行えないまま固まってしまったチョコレートは、カカオバターの結晶が粗大なものとなり、見た目も風味も悪い「ファットブルーム」が表面を覆う。
- シュガーブルーム・・・冷蔵庫などで保存していたチョコレートを温かい場所や湿度の高い場所などに放置してチョコレートの表面に水滴が生じた場合、チョコレートのなかに含まれている砂糖がその水に溶けだし、再び結晶化する現象。ファットブルームと同様に、チョコレートの表面に白いまだら模様ができる。
- チョコレートの保存法の基本は、パッケージの表示に従うこと。ショコラティエなどで購入する場合は必ず持ち歩き時間を確認する。
- チョコレートの保存において気をつける点は、チョコレートの特徴を把握しておくと分かりやすい。チョコレートの特徴は、ブルームの発生による味の低下や、急激な温度変化に弱い、まわりの匂いを吸収しやすい点。これらに留意しきちんと保存すれば、おいしいチョコレートを家庭でも食べる事ができる。