カカオの歴史をたどればわかるように、現在でも、カカオは途上国のプランテーションで生産されることがほとんどです。生産地は、カカオの植物としての性質上、赤道近辺の国々に限られるわけですが、そのほとんどが中南米やアフリカ、そして東南アジアといった途上国となっています。長い植民地時代を経験しているこれらの国々は、植民地時代からの延長であるモノカルチャーに依存しているため、激しい競争にさらされたり、気候不順によって生産量が変化したりすると、経済的に大打撃を被ることが少なくありません。
そうした途上国の農場では、不利な立場での過酷な労働に従事せざるを得ない人々がたくさんいます。特に、小学校程度の子供が、学校にも行くことができずに農園で働かざるを得ない環境は珍しくなく、カカオ農園で働く子どもたちは、「チョコレート」の存在を知らないといいます。
こうした状況の背景には、「安く買い叩かれる」という不当な取引が横行していることがあげられます。労働に対する正当な対価が支払われなかったり、生産性を優先するために過剰な農薬が使われ労働者の健康や自然環境にも悪影響を与えたりという事態が現実に起こっているのです。国内の農業をみてもわかるように、生産者が品質の良いものを作るためには、その労働環境や生活を保障し、自然環境にも配慮することが重要です。こうした基準を、途上国の人たちも享受できるようにするためには、国際的な取引をする上で、「公平であること」が重要な課題となってきます。
そうした「公平な貿易」を目指すのが、「フェアトレード」です。途上国の原料や製品を適正に、かつ継続的に購入することによって、途上国の経済発展を促進し、労働者の生活を改善するためのしくみを整えることを目的とした活動です。1940年代のアメリカやイギリスでスタートし、その後世界中に広まっていきました。日本でも、教科書で取り上げられ、大手スーパーが商品を取り扱うなど、理解が広まっています。
チョコレートは、見た目の華やかさについ心を奪われてしいますが、そのなかには、店頭に並ぶまでの間に、暗黒の闇の中を通ってきているものもあるわけです。チョコレートを楽しむ際には、児童の酷使や不当な労働条件といった社会問題にも関心を持ち、そういったこととは無縁のチョコレートを味わいたいものです。フェアトレードラベルは、まさにそうしたこととは無縁の「適正な」環境で生産されたチョコレートであることを認証しています。チョコレートについて学ぶときには、このような問題についても理解を深めたいものですね。