Lesson1-3 デリケートなカカオ

カカオの栽培地域

カカオは熱帯の植物です。

南アメリカ大陸の北西部、アマゾン川上流域からオリノコ川流域周辺が起源と考えられており、年間平均気温が20℃以上、年間降雨量1500mm以上という熱帯雨林気候の地域で栽培されます。(食用として摂取していたのはエクアドルの方が数世紀先という説もあり)

簡単に示すと、赤道をはさんで南北緯20度のあたりまでの地域ということになります。この地帯に、世界的な産地が並んでいます。

Jktu_21/Shutterstock.com

Jktu_21/Shutterstock.com

デリケートで手間のかかるカカオ栽培

「カカオの樹は100年保つ」と言われる事もありますが、生産性を考えると30年程度というのが実情です。

生育には、肥沃で水はけがよい土と豊かな水が欠かせません。とはいうのも、水は多すぎても少なすぎてもダメ、しかも風や病気などにも弱いため、一度に農場のカカオが全滅、ということもある大変デリケートな植物です。

さらに出身地がもともと熱帯雨林のため、熱帯雨林の地面がそうであるように、土は陰って湿った状態の落葉土である必要があります

ですから乾燥しないように、カカオを育む土を太陽の光から守らねばなりません。そのためにバナナなどの「陰」を作るための木を一緒に植える栽培法が多くの農園で行われています。

foto500/Shutterstock.com

foto500/Shutterstock.com

カカオは、とってもデリケートで手間のかかる植物なのです。

2020年のカカオ危機

このように栽培に大変な手間がかかるカカオですがカカオ絶滅の危機が危惧されているのをご存知でしょうか。実は、各メディアでは2010年ごろから、2020年にはカカオは世界で100万トン不足する可能性があると指摘されていました。

しかしながら、実際には不足せずに2020年も私たちの需要は満たされています。ではなぜそのような危機が取り上げられたのでしょうか。

アメリカのオンラインメディア「The Huffington Post(ハフィントン・ポスト)」(現在は「HuffPost(ハフポスト)」に改名)によると、チョコレート不足の原因は、

  • 地球温暖化に伴う干ばつ
  • カカオの木がかかる病気の拡大
  • カカオの栽培の難しさにより、とうもろこしなど生産性の高い作物への農地転換

などが関係していると分析されています。そしてこのカカオ危機問題と拮抗するように、現在世界でのチョコレート消費量は増加を続けているのです。

分析を見ても分かるように、このカカオ絶滅危機の原因は単なるチョコレート消費量の増加だけではありません。カカオ栽培の難しさ地球規模の環境問題、また生産性の上がる農地利用を求める資本主義世界の動向が絡み合って生じている問題だと言えます。

これらの問題は今に始まったことではなく、今後もずっとカカオの周りで続く問題であるのです。

2020年の危機は、サスティナビリティな栽培方法の導入や、世界のチョコレートメーカーによるカカオ栽培者への支援により、乗り越えることができています。

それでも、今度は2050年に枯渇するなどといううわさも出始めていますのです。

私達消費者が永遠にチョコレートを楽しむためには、カカオ生産者にも意識を向け、さまざまな問題を理解することが大切です。
近年カカオの国際相場の低迷もあり、生産者の収入は十分ではないともいわれています。
引き続き、世界中のチョコレート関連企業による継続的なカカオ生産者支援は不可欠であり、チョコレートを楽しむ私たちも、それぞれの立場でカカオ生産国の現状を理解し、支えることが必要だと言えます。

■Lesson1-3 まとめ■

  • カカオの起源は南アメリカ大陸の北西部、アマゾン川上流域からオリノコ川流域周辺と考えられている。
  • 栽培地域は南北緯20度のあたりまでの熱帯雨林気候の地域に集中している。
  • カカオの生産年数は約30年程度。
  • カカオの栽培には肥沃で水はけがよい土と豊かな水と、陰って湿った状態の落葉土である必要がある。土を乾燥させないようにするために葉の大きなバナナを植えるなどの工夫がなされている。
  • カカオの消費量が生産量を上回り、カカオが不足するという事態は常に危惧されている。その原因には、カカオ栽培の難しさ、地球規模の環境問題、資本主義世界の動向など、様々な問題が絡み合っている。