カカオは一年中収穫できますが、乾季と雨季の2回、収穫期があります。
カカオポッドの中からカカオ豆を取り出す作業は、昔ながらの手作業で行われます。注意深くカカオポッドの縦の溝に専用のナイフを入れて皮を切り、中の種子を白いパルプと呼ばれる繊維質ごと取り出します。
では、取り出された種子が「カカオ豆」になるまでを順を追って見ていきましょう。
発酵
カカオポッドから取り出されたカカオ豆は、発酵させる必要があります。これは、後々チョコレートの風味や色調を決めることになる重要な要素の一つとなります。
第一段階の発酵
まず取り出されたカカオ豆を、木箱に詰めたりバナナの葉で包んだりして酸素を遮断した状態にします。ここでは天然酵母が働き、パルプに含まれる糖分が分解されエタノールに変わります。ブドウからワインを作るときと同じ工程です。
パルプは分解され、水溶化し流れ落ちていきます。これが第一段階の発酵です。
第二段階の発酵
発酵が進み糖分がアルコールに変わったら、全体をよく撹拌して、今度は酸素を供給します。すると、酢酸菌などの微生物が活躍して第二段階の発酵が進んでいきます。
カカオの品種によってもこの工程の期間は変化しますが、だいたい1週間ほどかかる作業です。
このカカオ豆の発酵という過程は、チョコレートにとって非常に重要です。発酵の過程で生成されたエタノールや酢酸はカカオ豆に少しずつ染み込んでいき、カカオ豆の内部では糖類やアミノ酸が増えていきます。
これらの成分が、チョコレート工場でカカオ豆が焙焼・焙煎された際、様々な芳香や風味に変化していくのです。
洗浄
発酵が済むと、パルプを完全に取り除くためにカカオ豆を洗浄します。カビの発生を防ぐための工程ですが、カカオ豆のフレーバーを損なうため実際には洗浄しないことが多いようです。
乾燥
発酵後はカカオ豆を乾燥させます。天日干しの場合と機械で行う場合があります。
収穫後の稲の乾燥と同じで、機械でやれば作業時間は短縮されますが、しばしばカカオ豆がもろくなることもあります。一方、天日干しは均一に乾燥できますのでそういうことはありませんが、豆を裏返したり、夜露にぬれないように布を覆いかけたりと手間がかかります。
もちろん、風味が良いのは手間をかけて丁寧に行う天日干しであることは言うまでもありません。
カカオ豆の完成
乾燥後、水分量が7~8%になったところで、カカオ豆はいよいよチョコレートやココアになるために、世界へ向けて輸送されていくことになります。
■Lesson1-4 まとめ■
- カカオの収穫は年中できるが、乾季と雨季が収穫時期。
- カカオポッドから取り出された種子が加工される行程には、発酵→洗浄→乾燥などの段階がある。
- 発酵には「第一段階の発酵」と「第二段階の発酵」があり、これによりカカオの内部では糖類やアミノ酸が増える。これらが焙焼・焙煎されることによりさまざまな芳香や風味に変化していく。
- 乾燥の段階には、天日干しと機械乾燥がある。天日干しの処理をされたカカオの方が風味がよく高級である。